昼間はまったく思い出さないのに、夜になるとあんたを思い出すのはなんでだろう。


以前、夜に何か特別な事があったわけでもないのに、


最近よく思い出す。


最近顔を出してないから?


まさか。前にもこれぐらい会っていなかった時なぞザラにあったではないか。


なのに。何で。





会いたい、なんて。





こんな事考えてると知ったら、またあんたは笑うんだろうな、なんて考えて。


自嘲気味に笑った。










月 満ちりて










「あぁ、もうほん…っと、バカ! だ、俺ッ」


夜の街を疾走し乍ら、エドワードは舌打ちする。何やっているんだ自分、と。


走って、走って。


心は迷っているのに、身体は一直線に目的地に向かっていて。それが更にエドワードを


苛立たせる。


「くっそ…ッ」


もう何度もした舌打ち。けれど足は止まらない。


前を見据えてひたすら走る。


――やめろ相手にされないんだろうから笑われるだけださっさと宿に帰れよ


そんな頭の声と、相反する心の声。


――あいたい


会いたい。只、あんたに。

















電気の消されている家。


そんなもの気にもしないで走ってきた勢いのまま塀を乗り越えて、これも勢いのまま、


手を叩いて練成陣を作り、壁に押し当てる。


光が収まった後には一つの扉。


それを乱暴に開けて、中に入った。


もう家人の迷惑とか考えていない。


――元々考えてないが。





「君は…もう少し常識があると思ったが…? 私の勘違いか」





軍服の上だけ脱いだ格好。でも髪はぼさぼさのままで、如何にも寝ていた


という雰囲気をかもし出している男の両手には発火布。


「鋼の」


装着したばかりであろう手袋を取り乍ら、ロイは静かに云う。


そんな男を見乍ら、エドワードは口を開いた。あんたのせいだ、と。


「――何がだ。心辺りがないな、まったく」


「あんたのせいだ…ッ」


「だから、何がだ」


「何で夜になると思い出すんだ何で忘れさせたままでいさせてくれないんだ。あんたなん


か嫌いなのに、嫌いなのに…ッ――――あいたい…なんて、思わせるんだ……」


「………」


嫌いだ、と、呟く。


目の前の男は沈黙。


「――――」


エドワードもだから何も云えなくなって、同じく沈黙してしまったが為に


部屋に訪れた嫌な間。


「それはね、鋼の」


エドワードに近付き乍ら、ロイはやっと口を開く。


抱き込むように腕を絡ませて、耳元で囁く。





「私が、君を、呼んだから、だよ」




















「な…にを…」


「本当さ。君を呼んだ。呼び続けた。だから、君は、今此処にいるだろう?」


「ッ、そだ…」


「嘘じゃあないさ。君にあいた」


「嘘だ!!!」


「何故嘘だと?」


「あんたが…俺に、そんな…こと、云うはず……ない、」


「――――…信用がないなぁ」


「当たり前だ」


「少しは信じてくれてもいいだろう?」


「信じらんねー」


何をどう信じろと云うのか、この男は。


あいたかった?


呼び続けた?


――嘘をつけ。


「本当さ。月を見ていると人恋しくならないか?」


「別に」


「私はなるんだよ。だから君を呼んだんだ」


「――中佐でも呼べばよかっただろ」


俺なんかより、と云って顔を背けるエドワードに、ロイは、


「――――嫉妬か?」


と返す。しかも笑い乍ら。


「黙れ無能!」


「図星か…」


「だーまーれ!!!」


からかわれて遊ばれて。こんな事しにきたわけじゃないのに。





「私は君にあいたかったのだよ」





なのに。


「――ずりぃ…」


心にもないこと云って。


「私の相手、してくれるのだろう? 鋼の?」


「――――っ」


――なのに。


逆らえないようなこと、云って。


本当に、ずるい。





「最悪だ」





自分も、この男も。








笑みを浮かべる男が憎たらしくなってきて、噛み付くようにそれを自分の唇でふさいだ。








fin.












morninの冰苑さまに頂いてしまいましたv

嫌いだ!と口にしながらも、引かれてしまうエドが可愛いくて仕方ないですよもう///
扉練成という素晴らしい夜這い(こらこら)方法に乾杯v
そしてエドの気持ちに気づきながら、からかう大佐の麗しいこと!(何故ッ!?)
ってか、

「私が、君を、呼んだから、だよ」

すっごい殺し文句ですよ!
周辺被害で俺まで悶絶してたんですが!
ああもう、これ言われたら落ちますよね…?
そして二人は愛の夜を迎え…(←焔)

ええと、妄想激化のため、これにて!
冰苑さま、この様な素敵小説を有難う御座いました!!!!